はじめに
我が国の建設技術は、わが国特有の地理的、自然的条件を克服するため、絶えず改良を重ね、世界に誇る技術を確立してきた。しかし我が国は他国に類を見ない少子高齢化社会を迎え、社会活力の低下や社会保障費の増大による公共投資余力の減少が顕在化している。
一方、中国やブラジルをはじめとする新興国は目覚ましい発展を遂げており、わが国の高度な技術力による社会資本整備の需要は高まっている。
このような我が国の社会情勢の中、我が国における建設部門の持続的発展や国際貢献に寄与できる海外への社会資本整備の取り組みは非常に重要なものである。
以下課題を挙げる。
①国際競争力の強化
我が国の海外での社会資本整備の状況は、近年の国内企業との競争激化や海外の社会資本へのニーズの多様化により、受注の減少や赤字を出している案件が多くなってきている。したがって、受注と利益確保における競争力の強化が課題である
②日本標準と国際標準の相違
海外では、その国の成り立ちにより、技術基準や資材規格、試験方法等が日本の規格と相違していることがあり、品質やコスト面などに影響している。課題として、規格の整合性を推進するべきである
③海外市場へ対応不足によるリスクの増大
我が国の社会資本整備への取り組みが国内市場を主、海外市場を従、と捉える傾向にある。そのため、商習慣、気候、風土の違いからくる海外市場独特のリスクの対応が課題である。
以下課題に対しての対応策を述べる
①相手国のニーズに応じた総合的事業展開の実施
海外の社会資本整備を、従来の工事請負のみの事業から、その国のニーズに応じた事業へ展開していくことが重要である。
具体的には、デザインビルド(設計施工一括方式)やCM(コンストラクション・マネジメント;民間が準発注者となって発注者代行)などから、O&M(オペレーションマネジメント;一定の公共サービスの提供・管理を民間に委託するもの)やPFI(民間が事業主体として資金・ノウハウを使い公共工事を行う)、BOT/PPP等管理も含めたトータルサービスを提供する。
また、不動産開発や流通分野への進出など周辺事業への展開を推進する。
このような相手国のニーズに合わせた多様なサービスの提供主体へと、事業の転換、発展を図っていくことで受注の増加や利益の確保が期待できると考える
②規格・基準の整備推進
国内規格・基準を国際基準に適合させるとともに、日本の規格・基準を国際基準とする取り組みが重要である。
具体的には、国内において、国際的な発注、契約方式の採用を推進する。
海外においては、需要のある技術を積極的に技術協力や技術移転を推進する。そうすることにより、規格・基準の統一が推進されるとともに、海外における我が国の優れた技術が基準となり国際化されると考える
③情報のデータベース化と人材育成
継続的に海外での社会資本整備に取り組むうえで、相手国の情報やノウハウを蓄積することや、海外事情に精通した人材を育成することは非常に重要である。
具体的には、その国の法令、商習慣、資材、人材の調達方法、トラブルや失敗事例とその対応策等、あらゆる情報のデータベース化を推進する。
契約管理やクレーム処理など海外固有の知識、経験を有する人材の育成が必要である。そのためには海外経験が豊富な団塊世代の積極的な活用によるOJTを実施し、ノウハウの伝承を推進すべきである。また、国際的に活躍する事のできるAPECエンジニアを取得する。
そうすることにより、誰もが安心して活躍する環境が構築されると考える。
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