29.Ⅲ.1.1 地盤構造物の維持管理。生産性向上を図るための技術的課題(調査・設計・施工・検査・維持管理・更新)から3つ挙げよ

我が国では高度成長期以降に急速に整備された社会資本が一斉に老朽化することが懸念されており、兼山正の確保が求められている。一方建設業就業者数減少、人口減少、少子高齢化による建設段階での生産性向上が必要とさている。

上記背景を踏まえ、地盤構造物の維持管理、生産性向上を図るための技術的課題(調査・設計・施工・検査・維持管理・更新)から3つ挙げよ。また、その対応策と効果および留意点。


①熟練技術者の技術継承(調査段階);人口減少や少子高齢化による建設業有業者数も減少する中で、熟練世代の技術者・技能者が順次退職していくことになる。調査において地域の地質・地盤を熟知した熟練技術者の技術・技能の継承が課題である。

⇒行政のみで財政確保・計画策定・維持管理等の運営を見直しておく必要性がある。具体的にはPPP/PFIの活用及び長期保証型や性能規定型の新しい契約・発注方法を積極的に活用し民間資金や技術力を有効活用する。ハードとソフト対策を織り交ぜにした整備を行う。具体的にはリスクアセスメント(労働災害のリスクの大きさから順に対策を講じる)と事業再評価を行い、選択と集中によるハード整備を行う。ソフト対策はハザードマップやICT活用、避難システム構築・ドローンを活用した点検による減災に取り組む。


②正確な地盤構造物情報の取得(調査段階);地盤構造物は安価で入手が容易な主材料とする盛土や切土法面、擁壁など一連区間で連続的に整備されており、既存ストックが膨大である。さらに人口減少や少子高齢化の進展に伴う税収減、社会保障の増大による財政難の為、調査数量が必要量に対して不足しがちである。このような状況で、正確に地盤構造物の情報を取得することが課題である。

⇒ICT技術を駆使した当たらな調査手法を開発することが有効とであると考えられる。具体的には地盤構造物にICタグセンサーを設置し、そのデータをネットワーク回線により集約し、挙動を監視するシステムを構築する。これらのデータを一元管理することで、広範囲な地盤構造物の状況を把握することが可能となり、経年的な変状や劣化、機能低下の予測に資する情報を取得することができる。

⇒留意点としては、情報データベースは一部の組織内で実施しても効果が少ない。各自治体や調査・設計者、施工者、研究機関などの産官学で共有するシステムの構築が必要である。また、調査段階で得られる調査結果は、点または線状の情報であるが、さらに面的な情報へ的確に変換するため、CIMを導入して3次元での情報化を図るシステムも有効である。これにより精度良く設計・施工を実施することが可能である。

更に地形・地質の評価は計算できまるような画一的なものではない。実践的な経験に基づく判断が要求される為、このようなスキルを持った技術者の育成も不可欠である。

③相対的機能低下に対するあらたな設計手法(設計段階)

近年、温暖化に伴う異常気象により、降雨形態が変化しており局所的な豪雨が頻繁化している。また、南海トラフ地震や首都圏直下地震の発生率が高まっており、これまで経験的な設計手法で整備されてきた地盤構造物の相対的な機能低下が懸念されている。想定外の超過外力に対しても、合理的に機能強化を図っていく必要があり、新たな設計手法の確立が課題である。要求性能(使用性・修復性・安全性)を設定する性能設計の導入の推進

⇒自然現象の変化にともなう超過外力に対応するため、粘り強い構造となるよう機能強化を図っていく必要がある。これまでの経験的な手法では、解析が困難であったが、高度な数値解析・FEM解析などにより、超過外力にたいして冗長性を確保した地盤構造物の検討を行う。巨大地震に関しては耐震設計法の高度化が不可欠である。具体的には、動的解析手法を積極的に導入して性能照査を実践する。

⇒留意点としては、高度な解析・分析においてはパラメーターや構成が複雑であり、設計者の判断が結果に影響を与えるため、留意が必要である。アウトプットを適切に評価するためには、調査内容や周辺状況を踏まえインプットやパラメーター設定の信ぴょう性をチェックするスキルが不可欠である。OJTから脱却した人材育成に取り組み、OJTで取得するノウハウやスキルをOFFJTで補う効率的な教育・訓練を実践することが必要である。

④ICT技術を活用した施工(施工段階)

我が国の厳しい財政状況のもと、建設業が衰退し、就業者数が減少している。さらに熟練技術者数が減少している。さらに熟練技術者である団塊の世代の退職により、技術の空洞化が生じている。土工はマシンガイダンスやマシンコントロールによる施工機械で情報化施工やレーザースキャナ測量による施工管理の促進・普及が課題である。

④地盤の不果実性への対応(施工段階);現状道路等ではICT技術が実施され、無人化や精度の高い出来形・品質管理により効率化が図られている。問題点は人員が少なくなる為、不均等場地盤における、締まり具合のバラツキや不整合等の地層境界等想定外の地盤状況を見落とす可能性が高まる。

⑤地盤構造物の劣化速度の予測・予防保全(維持管理段階);現状は定期点検・異常時点検では劣化が進んでからあるいは変状が出てからの事後対応である。問題点は地盤構造物の劣化を事前に知りたいが、地盤条件や気候条件により、地域ごと、施設ごとに劣化速度が異なると考えられ、個別には不明である。

⇒アセットマネジメント(資産管理)を導入して構造物の長寿命化を図り、補修や更新時期をコントロールする。膨大な地盤構造物に対応するため、調査観測データをデータベース化する。

⇒(対応策)多様なモニタリング技術を利用することで、総合的に個別の劣化速度を想定する

・物理探査モニタリング;電気探査などを定期的に行い、比抵抗の変化から地盤の風化や構造物の劣化、水みちの変化などを把握する

・地形計測モニタリング;レーザー計測を定期的に行い、三次元的に地形や構造物形状の変形をとらえる

・IOTモニタリング;杭やアンカー、横ボーリング等それぞれに荷重や水圧、ゆがみ等を自動観測する計器を標準装備し、ネットで総合的かつリアルタイムに変化を観測する

⇒(効果)品質向上として劣化速度の見える化、対応処置が適切に適用される。生産性向上としてIOTが標準となれば、人員を削減できるうえに膨大な施設を管理できる可能性がある

⇒(留意点)これまでのように、現地で人が観測する機会が減るため、現場特有の情報の伝承、申し送りが不足する。目視情報の重要性も残ると考えられる。



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