前項で挙げた留意点を踏まえ、現在の厳しい財政状況を考慮した地盤構造物の在り方を以下に述べる。
①施設の機能を発揮させる維持管理
各地盤構造物施設の特質と状況を理解した維持管理更新が必要である。例えば軟弱地盤上の盛土であれば現在の圧密沈下状況の把握や沈下抑制工の効果確認をしたうえで、今後維持管理の方法を決定する。
上記の手法により、維持管理の特性、役割が明確になり主目的に沿った維持管理ができ、結果的には長期コストの低減につながる。
②安全、安心を確保する維持管理
高まる安全、安心を考慮して、修繕時に防災・耐震性能の向上を図る維持管理が必要である。例えば構造物の耐震化や液状化対策を施した維持管理を行い施設の長寿命化を目指す。
上記手法では短期コストは増大するが、維持管理費用などを考えれば長期的コストは低減され、かつ安全・安心を確保することができる。
③費用と機能のバランスを考慮した維持管理
従来の事後保全的管理から予防保全的管理への移行を促し、費用と機能のバランスを図る。新技術の導入や技術開発により、ライフサイクルコストの低減につながる維持管理が必要である。例えば軟弱地盤上の河川堤防であればPDR(パーカッションドリル式)動的貫入試験を導入することで、詳細な地質を把握でき、精度の高い維持管理が可能となる
上記の手法により、限られた予算の中でも効率的な維持管理ができ、費用対効果も大きくなる
④施設に対する調査・点検評価の実施
現状では既存施設に対する調査、点検が未実施であったり、健全度評価をするには不十分な施設が多数存在しており、これらを効率的に実施する必要がある。例えば既存施設や地域の観測データ等の照査と施設の社会的重要度を勘案し、プライオリティ(優先順位)を明確にした上で施設の調査、点検評価を実施する。
上記の手法により、効率的で精度の高い調査、点検評価が可能となり、コスト低減につながる。
⑤維持管理制度の把握と活用
施設の維持管理情報の共有化と利用活用を図る必要がある。現状では施設の維持管理情報の蓄積が不十分で、蓄積されている情報も有効的に活用されているとは言えない。したがって施設の調査・評価を速やかに実施して情報を蓄積し、DB化の促進やIT技術への適用を図る必要がある。例えばDB化の過程で汎用性の高いソフトや保存型式を用いて共有性を高める。今後はGISやCIM技術の活用も視野に入れる。
上記手法により、維持管理における人的・時間的コストの低減につながる。
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